特集

日本で暮らす 留学生
     



日本の留学生受け入れ政策は、1983年に時の中曽根総理大臣が、21世紀初頭までに留学生の受け入れ数も先進国並に10万人を目標とすると設定したことを始めとする。留学生受け入れ体制の整備、アジア経済の回復などを受けて、日本の高等教育機関に学ぶ海外からの留学生は昨年、過去10年で最高の伸びを示し、平成13年5月1日現在、7万8千人(就学生を除く)に達したことが文部科学省の調べで明らかになった。
 表から見ると、留学生総数は増えているが、その内ほとんどが私費留学生数であり、国費留学生数と外国政府派遣留学生数はあまり変わっていないことが分かる。大勢の私費留学生は生活のためにアルバイトが必要となっているのが現状だ。アルバイトをしながら勉強する留学生達の進学状況、どのように留学生活を送っているのかなど、資料館のデータを参考にしながら見て行こう。



留学生たちの進学状況

日本語の基礎の有無に関わらず、1年または2年間日本語学校で日本語を習い、大学、大学院(自国での4年制大学卒業生のみ)、専門学校などに進学する留学生が多い。大学進学を希望する学生がほとんどであるが、近年専門学校に入る留学生が増加している。これは恐らく留学生の間で、学歴の追求よりも実能力を重視する傾向が強くなってきたからであろう。勿論それは留学生それぞれ個人の状況によって違う。
 進学資料館で行った来館留学生(2001年4月〜2002年7月、8000人の留学生を対象)へのアンケートによると、日本語学校卒業後の進路は韓国人留学生: 大学進学(35%)専門学校進学(30%)、語学研修(25%)、大学院進学(5%)、その他(5%)。中国人留学生(香港、台湾含む):大学進学(70%)、大学院進学(15%)、語学研修(2%)、専門学校進学(5%)、その他(8%)となっている。
 以上のデータから明らかなことは、韓国人留学生の場合、専門学校に進学する学生の数がかなり多い。平成11年から韓国人留学生の専門学校への進学の延びは鈍くなっているが、専門学校に在籍している留学生の出身国・地域から見ると、依然全体の39%を占めている。専門分野を見ると、特に韓国人留学生に人気の高い分野はコンピューターデザインである。しかし、日本語学校を卒業してから帰国する韓国の留学生も少なくはない。これは韓国の大学生の中で休学して、半年もしくは1年ぐらいの短期語学研修をしに日本に来る韓国人大学生が多いからでもある。また、日本語学校を卒業後の進路の幅は他の国から来た留学生より韓国人留学生のほうがかなり広そうだ。
 留学生全体の半数以上を占める中国人留学生は、専門学校より大学進学の方がかなり多いということである。これは学歴を重視する中国社会に関係があると思われるが、主な原因は大学に進んで日本により長く留学していたいからであろう。近年来日した中国人留学生は、昔より年齢も若く日本語を習うというよりむしろ日本の経済管理、コンピューター技術、サービス業を学びに来るケースが増えている。つまり、理論知識より技能知識の方を限られた時間の中で身に付けたいというのが、今の中国人留学生の本当の願望である。

 

大学専攻分野別留学生数


文部科学省の資料から留学生の専攻分野別の分布を見ると社会科学専攻が最も多く、現在24,044人(30,5%)を占めている。次に人文科学20,180人(25,6%)、工学11,680人(14,8%)となっている。理系より文系が多い理由として考えられるのは、入学のために基礎知識が必要な理系より、高校時代の知識と繋がりがなく、誰でも入れる文系の方が留学生にとって楽ということだ。また、文系で日本語を専門する留学生もかなり多い。その他、福祉を勉強する留学生も増えている。これは恐らく各国でも社会問題となる少子化・高齢化・バリアフリーなどに対する関心が高まっているからであろう。 
 資料館の調査によると、留学生の進学前希望分野及び希望学校は;韓国人留学生 : 多様(電子、情報、観光、調理、美容、ファッションなど…);希望学校;東京大学、早稲田大学、日本大学、立教大学;中国人留学生:商学(経営、経済)、語学(日本語、英語)、国際関係、コミュニケーション、希望学校;国立大学(東京大学、横浜国立大学、千葉大学)早稲田大学、明治大学、日本大学。
 これらのデータから見ると、希望通りの大学や分野で勉強する留学生はかなり少ない。その原因は、やらざるを得ない長時間のアルバイトにあるのだろうか?。

アルバイトの現状

法務省では留学生の毎日のアルバイト時間を一週間につき28時間以内としているが、実際はほとんどの留学生がこの以上アルバイトをしている。そうでなければ生活が出来ないからである。また、仕送りだけで学費を払う留学生はごくわずかである。90%以上の留学生はアルバイトで学費と生活費を払うことになっている。
 アルバイト先は飲食店が一般的である。日本語学校の新入生は日本語が分からないため、洗い場でのアルバイトが多い。段々日本語が分かって来るとホールやレジなど、お客さんと接する仕事に変わる。時給もほぼ800円から1,000円に上がるのが一般的である(関東地方基準)。日本語が上達するにつれ、コンビニ、会社やホテルなどアルバイトの範囲も広がってくる。専門技術を持つ留学生は学校に通いながら会社などの場所で専門技術に関する分野でアルバイトすることもある。例えば、コンピューター修理、講師などだ。
 アルバイト探しの方法は、友達の紹介や自分で直接面接に行く(成功率が低い)など様々だ。インターネットでの検索も近年増えている。進学資料館のように、留学生のための会員制無料利用コンピューター室が、先輩留学生達の支援により建てられるようになった。留学生なら誰でもいつでも自由に使え、アルバイト情報がより早く、より新しく得られる。
 進学資料館アンケートによると、80%の留学生がアルバイトをしながら学校に通っている。1日平均6時間、1ヶ月の収入はほぼ10〜15万程度である。



住まいの理想と現実



 アルバイトをしながら学校に通っている留学生にとって、まず通勤時間が出来るだけ無駄にならないよう、交通の便利な住まいが必要である。そのため、山手線沿線が一番人気だ。また、バイト先か学校に近い場所も好まれる。次いで駅に近い(徒歩10分以内)アパートが人気であるが、女子学生にとってはアルバイトが夜遅くなることが多く、駅に近いというのは重要である。駅から10分以上かかる場合、自転車に乗る人もかなりの数だ。勿論、学校・バイト先・住まいを自転車一台で行き来出来るのが何よりも理想的であることは言うまでもない。しかし、ほとんどの大学は東京郊外にあるため、毎日アパートから学校まで1時間半、また学校からバイト先まで1時間ぐらいかかってしまう留学生が多いのが現状だ。
家賃が高額なため、2人で一緒に住む留学生も多い。そうすれば、1人当たりほぼ4万円で十分である。またアパートより学校の寮のほうが随分格安となる。そのため、就職するまでずっと学校の寮に住む人も少なくない。学校の寮の場合はほとんど1ヵ月3万円ぐらいですむが、門限や規則が厳しいためやはり深夜までアルバイトしたい学生にはあまり向いていないだろう。
外国人の場合は比較的新しい、エレベーター付きのマンション等を借りるのがかなり難しく、築20年ほどのマンションに住む学生が多い。またアパートを借りる時は日本人の保証人が必要である。留学生数の増加により、現在では外国人向けの不動産やマンションなども出来ている。


日本滞在期間

日本語学校に2年間通った後大学に進学する場合、更に4年間の留学ビザ(普通は2年間で1回更新)が取得出来る。留学生就職難により、大学卒業後すぐ就職できる学生は非常に少ない。韓国人留学生の場合は様々で、日本語学校を卒業してすぐに帰る留学生もいるが、60%ぐらいは大学や専門学校に進学するため留学生活は4〜6年間という学生が多い。中国人留学生の場合は大学まで通うのが一般的だ。卒業後就職ができなかった場合、勿論そのまま帰国することもあるが、もっと日本にいたい場合は2年間の大学院に進学する。そうすると、殆どの留学生の日本滞在期間は、短くても8年間となってしまう。
 また、専門学校に進学する場合、在学期間は大学進学者に比べ1年もしくは2年短くなるが、卒業後日本で就職し、専門学校で習ったことを確かめたいという留学生も大勢いる。実際、進学資料館の行った日本滞在予定期間についてのアンケートでは、まだ未定という学生が多い。

留学生の就職動向

大学等で学ぶ留学生数が増え続けているため、就職先である企業は、語学力や日本留学で培われた専門的能力、日本の経済、社会、文化等への理解など留学生の特性に着目しつつある。一方、留学生も、専攻分野や留学終了後に希望する進路の多様化が進んでおり、日本企業での就労経験を目的として日本企業への就職を希望するケースが増えている。
 就職の動機としては、「将来のためのキャリア形成」、「日本で勉強したことを活かしたい」、「母国との架け橋」等が多い。日本企業への就職を通じて期待するキャリア形成のイメージとしては、「国、地域、企業の種類には関係なく自己のキャリア形成」、「出身国に帰国し新たな職業に就く一過程」、「日本企業の海外(出身国)法人の基幹社員を志向」が多い。日本での就労希望期間については、ある程度長期間(5年以上)勤務することを前提としていることが多いが、実際には、入社後の仕事の内容と自らのキャリア形成のイメージが合致し能力を生かせると感じたために、当初の考えよりも長期に日本で勤務しているという事例も多い。
 留学生を募集採用する動機としては、「事業のグローバル化への対応」、「留学生の持つ特性に着目した人材登用」、「国籍を問わない人材登用」が多い。いずれの場合でも、なんらかの形で事業の海外展開や国際化の面での役割を期待しているケースが多い。
 企業が採用に当たって留学生に求める能力・資質は、日本語能力、英語能力、専門知識・技術、いわゆる日本的な雇用慣行を受容できる資質、日本及び出身国における商慣行などの諸システムへの理解などを重視している。
 留学生を募集・選考するに当たり、就職を希望する留学生の情報の把握、効果的な募集媒体の確保、選考方法について困難を感じる傾向がある。特に、中小企業でこの傾向が強い。

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